法令用語 『及び』と『並びに』の使い分けについて

先日、外為法が改正され、行政制裁や罰則が強化されました。追加された第53条第4号には、『及び』と『並びに』が併用されていましたので、前回の”『又は』と『若しくは』の使い分けについて”に続き、今回は、第53条第4号を例に、『並びに』と『及び』の使い分けについて述べたいと思います。

『及び』と『並びに』は共に、併合的接続詞と呼ばれ、普通に使われるのは『及び』です。併合的接続の段階が2段階になる場合、例えば、A+Bというグループがあって、これにCを加える場合は、
(A及びB)並びにC
というように、小さい接続の方に『及び』を使い、大きい接続の方に『並びに』を使うのだそうです。小さいグループが3つ以上で構成される場合は、”若しくは/又は”と同様に”、”で並べ、最後に”及び/並びに”が付きます。
(A、B及びC)並びにD
併合的接続の段階が3段階以上の場合もありますが、この場合では、最も小さい接続にのみ『及び』を用い、大きな接続には全て『並びに』を使うのが現在の慣例の様です。
{(A及びB)並びに(C及びD)}並びにE

外為法53条第4項を例にとりますと、以下の様になります。


第一項又は第二項の規定による禁止をする場合において、経済産業大臣は、違反者に係る次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める者が当該禁止の理由となった事実及び当該事実に関してその者が有していた責任の程度を考慮して当該禁止の実効性を確保するためにその者による当該禁止に係る業務を制限することが相当と認められる者として経済産業省令で定める者に該当するときは、その者に対して、当該禁止に係る期間と同一の期間を定めて、当該禁止に係る範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止することができる。

一 当該違反者が法人である場合その役員

及び  ⇒ 現在役員である+過去役員であった(60日以内)

当該禁止に係る処分の日前六十日以内においてその役員であつた者

並びに  ⇒ 役員+使用人

その営業所の業務を統括する者その他の政令で定める使用人(以下この号及び次号において単に「使用人」という。)

及び  ⇒ 現在使用人である+過去使用人員であった(60日以内)

当該禁止の日前六十日以内においてその使用人であつた者

二 当該違反者が個人である場合その使用人及び当該禁止に係る処分の日前六十日以内においてその使用人であつた者


接続が多段階になる場合、『及び』と『並びに』が混在しますので、非常に表現が複雑です。このような場合は、『又は』と『若しくは』の時と同様に色分けして、どれとどれが接続されているか確認すると判りやすいと思われます。

参考文献 林修三、法令用語の常識

山田 徹