炭素繊維と外為法

八若洋平です。

 7月初旬に全日空が新型B787を公開した。このB787は、構造部材の50%に炭素繊維強化樹脂(CFRP)を適用して軽量化を図り、燃費改善に役立てると伝えられている。
 炭素繊維の応用製品は、その強度特性を生かしたゴルフクラブやテニスラケットがあるが、最近では飛行機の構造部材やパソコン部品などが開発されている。一方、炭素繊維は先端素材として武器等に使用する用途もあるため、外為法による安全保障貿易管理の面では様々な規制を受ける。例えば、外為法に係わる輸出貿易管理令の別表第1(以下、省略)の2の項(原子力関連)ではガス遠心分離機のロータ、4の項(ミサイル関連)では炭素繊維の複合材、5の項(先端材料)ではプリプレグ、プリフォーム、13の項(推進装置)ではロケット推進装置関連の複合材、16の項(補完品目)での補完規制(キャッチオール規制)と数多くの規制がある。
 炭素繊維の製造方法は日本のメーカーが確立したため、当初生産量は圧倒的なシェアを持っていたが、最近では外国での生産が増えてきている。その大部分は日本のメーカーが海外進出したものだが、進出先は欧米の限定的な国である。炭素繊維についてはその製造技術についても外為法の規制があるため、所謂ホワイト国に絞った技術輸出であることが特徴である。最近、日本のメーカー(T社)が韓国(ホワイト国)の子会社での製造に踏み切ったとの記事が新聞で発表された。これはアジア地区への初めての技術輸出のケースなるが、外為法の観点からみると事前の充分な点検が重要である。
 最近になって、炭素繊維の複合材を自動車用途に使う研究も盛んに行われている。そのような研究の際に注意すべきは外為法の規制について厳密に検証する必要がある。炭素繊維は、モノフィラメント、テープ、チョップされた繊維などが、また炭素繊維を使用したプリプレグ、プリフォーム、更に成型品に至る全ての開発段階で規制の対象になる。一部民生用や医療用については除外規定があるが、いずれにしろ該非判定をする際には最終用途を明確にすることが必要不可欠となる。
 ここでは炭素繊維を取り上げたが、外為法の規制内容と炭素繊維などの開発内容の両方を充分理解するには、双方の専門知識を持っていることが必要である。日本技術士会所属の技術士集団が立ち上げたCP&RMセンターは安全保障貿易管理と技術開発についての専門家集団であり、産業界、学術研究における技術開発において、外為法の危機管理に対応する点で役立つものと考えている。