ヘリコプターと防衛装備移転3原則

外為法に関係した業務をしていると、平和の対極としての地球上の戦闘に目が向かわざるを得ない。
そしてそこで使用されている武器が何かということを把握することになる。ここではまずISIS(the Islamic State of Iraq and Greater Syria)の状況から始めたい。

9月末から米国は、イラク及びシリア北部のISISへの空爆を開始した。但し、オバマ大統領は地上軍の派遣は現在まで見送っている。
TIME(Oct 20,2014;p6)の記事”A Border-Town Battle Shows How ISIS Is Evading the U.S.”によると、ISISは空爆を逃れるために、一般市民の住居区に移動している。このため米国は空爆にjet bomberを使わず、動いている標的を攻撃するのにヘリコプターを使用している。一方ヘリコプターは地上から攻撃されるという問題があり、現にイラク軍のヘリコプターが撃墜されたりしている。

日本では昨年4月1日に「武器輸出三原則」に代わって、「防衛装備移転三原則」が閣議決定された。従来は原則として武器の輸出は認めないとして必要に応じて個別の例外措置を重ねてきたが、「防衛装備移転三原則」では以下の三つの原則に基づき防衛装備の海外移転を行うとある。
1.移転を禁止する場合の明確化
2.移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開
3.目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保
これに連動する形で防衛省により防衛装備品の国際共同開発を推進することが、日本経済新聞2013年11月30日朝刊のトップに報じられている。
この記事の最初に陸上自衛隊の多用途ヘリコプターを共同開発するとして、川崎重工業と欧州エアバス、富士重工業と米ベル・ヘリコプターの2組が名乗りを上げたことが記載されている。

思い起こすと昨年3月にフランスの防衛企業が最新鋭のヘリコプター着艦装置を中国に売却したことが明らかになっている。この装置は悪天候でもヘリコプターが船員の補助を必要とせずに離着艦が可能となる。中国政府はこの装置を例の海洋監視船に装備するようである。日本政府には開発した技術が思いもよらない形で日本国民の安全を脅かすこととならないよう、慎重に判断してもらいたい。
いずれにしろ「防衛装備移転三原則」の閣議決定は、輸出貿易管理業務をする上で大きな転換点である。防衛装備には武器だけでなく武器技術も含めるとしている。特に企業にとっては、上記3の「目的外使用と第三国移転」にくれぐれも厳重な注意を払う必要がある。