安全保障貿易管理 技術用語解説集 No.3「圧電性物質」

用  語 項  番
圧電性物質
圧電性単結晶/圧電セラミック粒子/圧電複合材料
10-1省1、解10
15-5省6、解10/解15/15-5省6、解15

圧電効果を示す一群の物質を圧電性物質(piezoelectric materials)といい水晶やロッシェル塩などの結晶そして金属酸化物の粉末を圧縮焼成した圧電セラミックス、さらに高分子化合物を利用した圧電性高分子(後出)膜などが代表例で多方面の用途をもつ。圧電効果(piezoelectric effect)とは、ピエゾ効果とも言い、イオン結晶が外力による応力に対応して誘電分極を生じ電気を発生する現象(1次圧電効果)のこと(図1参照)で、キュリー夫妻が、1880年に電気石で発見し、後に、通電により機械的変位を生ずる現象としての逆圧電効果(2次圧電効果)も実証した1)。後者は各種アクチュエーター*として応用されている。

圧電性セラミックス(piezoelectric ceramics)

力を加えると誘電分極をおこす金属化合物で、高温処理によって製造されるものの総称。多結晶性であるため、単結晶にくらべると圧電効果は小さいが、機械的強度が大きく、化学組成を容易に変えることができる利点がある。強誘電体として知られるペロフスカイト構造**のBaTiO₃、これとPbTiO₃やCaTiO₃との固溶体、PbZrO₃とPbTiO₃の固溶体(略称PZT)を主体とした圧電性物質を図2に示すように素子とした製品が、機械的エネルギーと電気的エネルギーの相互変換に用いられている1)。それらの典型的な応用例の一つとして電子ラーターの点火の仕組みを図3に示している。

圧電性高分子(piezoelectric polymer)

ポリフッ化ビニリデン(PVDF) またはその共重合体が代表的なもので、大きな双極子モーメントの側鎖を持ち、この側鎖を一方向に配列すると強誘電性が現れる。強誘電体が、外力で変形すると、側鎖の変位に応じた電気が発生する。高分子材料は薄いフィルムにできるので、圧電性を利用したものとしてマイクロホンやスピーカの振動板、超音波トランスデューサなどがある。加熱により電気を発生するものを焦電性高分子(pyroelectric polymer)といい、これら2つの性質は、しばしば同じ物質で発現する。焦電性を利用したものとして赤外線センサ、固体撮像素子などがあり応用は広い範囲に及んでいる 2)

*アクチュエーター(actuator):機械・装置などで、エネルギーの供給を受けて、最終的な機械的仕事に変換する機械要素。サーボモーター・油圧シリンダー・空圧シリンダー・油圧モーターなど 3)。
**ペロフスカイト構造(perovskite structure):化学式RMX₃で示される複酸化物に見られる結晶構造。理想構造では、XᴵᴵRⅥMX₃の配位状態をとり(左肩は配位数)、立方晶系に属する。図4において黒球はO、またはX、白球はR(単純立方配列)、斜線球はM、黒球+白球が面心立方格子、白球、斜線球はそれぞれ単純立方格子である 1)。

参考文献

  1. 『岩波 理化学辞典 第5版』岩波書店
  2. 『ブリタニカ国際大百科事典 電子辞書対応小項目版』Britannica Japan Co., Ltd./ Encyclopaedia Britannica, Inc.
  3. 『大辞泉 第二版』 小学館

1次圧電効果 電圧素子の構造 電子ラーターの点火の仕組み 単純立方格子

製品例 リンク集:
NECトーキン株式会社
株式会社 タイセー
株式会社東京センサ
株式会社 富士セラミックス
株式会社スライブ
TE Connectivity Ltd.
Mide Technology
TDK株式会社
京セラ株式会社