該非判定参考技術資料 No. 1

フッ素ゴムについて
現在のフッ素ゴムは、1957年、ビニリデンフルオリド【CF2=CH2】とヘキサフルオロプロピレン【CF2=CFCF3】の共重合体を、3Mから“Fluorel”としてDuPont™から“Viton®”として発表(商品化)されたのが始まりです。

このビニリデンフルオリドは、輸出令別表第1の5の項(2)および(17)、貨物等省令第4条第一号ロおよび第十号イに登場します。
ただし、貨物等省令第4条第十号イでは、
イ ビニリデンフルオリドの共重合体であって、延伸しない状態でベータ型結晶構造を有する部分の重量が全重量の75%以上のものとされており、非晶質のゴムは結晶構造を有しないので、この規定には非該当です。
貨物等省令第4条第一号ロでは、
ロ 第十四号イに該当するビニリデンフルオリドの共重合体からなるものですので、同様です。

フッ素ゴムにはその後、
ビニリデンフルオリド【CF2=CH2】とヘキサフルオロプロピレン【CF2=CFCF3】にテトラフルオロエチレン【CF2=CF2】を加え、フッ素含有量を増加させることで耐薬品性を向上させた3元系フッ素ゴム

テトラフルオロエチレン【CF2=CF2】とプロピレン【CH2=CHCH3】を共重合させ、耐アミン性を向上させたFEPM(ISO記号)(AFLAS®(旭硝子(株)の商品名)が有名)

ビニリデンフルオリド【CF2=CH2】とテトラフルオロエチレン【CF2=CF2】にパーフルオロアルキルエーテル【CF2=CF-O-Rf】を共重合させて低温性を改善した低温用フッ素ゴム

テトラフルオロエチレン【CF2=CF2】とパーフルオロアルキルエーテル【CF2=CF-O-Rf】を共重合させ主ポリマー骨格からC-H結合を除去する事で耐薬品性を極限まで改善したFFKM(Kalrez®、ダイエルパーフロが有名)
などが生まれました。

低温用フッ素ゴムやFFKMに含まれるパーフルオロアルキルエーテルですが、ビニルエーテルの構造を持っています。貨物等省令第4条第一号ハに
ハ ビニルエーテルのモノマーを含むゴム状のふっ素化合物からなるシール、ガスケット、バルブシート、貯蔵袋又はダイヤフラムであって、航空機又は人工衛星その他の宇宙開発用の飛しょう体に使用するように設計したもの
と記載されていますので、パーフルオロアルキルエーテルを含むフッ素ゴムは、この規定に注意する必要があります。

ここで、
「航空機又は人工衛星その他の宇宙開発用の飛しょう体に使用するように設計したもの」も注意が必要です。

米国ではOリングのサイズを最初に規格化したのが航空業界だったため、航空機用Oリング規格AS568は、他の多くの業界(自動車、真空機器など)でも使用されています。そのため、飛しょう体用途以外に使用されるのが明白で、AS568規格の寸法サイズのみを引用している場合は、本規定には非該当と判断されます。

逆に専用設計されたものでは無く、汎用規格化されたサイズを使う場合でも、図面上に明記されていると「設計したもの」として対象とみなされる可能性があります。

以上
――――――――
注:
カルレッツ®は、パーフロロエラストマーと分類される高分子材料です。 カルレッツ®と、 同じくふっ素系高分子に属するふっ素系樹脂(プラスチック)であるテフロン(PTFE:ポリ テトラフルオロエチレン)、ふっ素ゴム(エ. ラストマー)の化学構造式を示しました。