IoT(モノのインターネット化)

最近、IoTやAIなどの記事を新聞などでよく見かける。これらの記事の中ではIoTとAIを区別することなく混在した内容が多く、理解するのに苦労する。ここではIoTに絞り、外為法との関連を考察したい。

IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット化」などと訳されている。具体的な応用例を3つ挙げる。先ず「スマートメーター(次世代電力計)」が電力自由化に伴い既に普及している。次に「スマート衣料」と呼ばれる医療機器を繊維会社が開発しており、これは着るだけで体の医療情報を取得出来る着物である。最後に、ゴミ箱にセンサーを取り付けた「ゴミ収集システム」があり、沖縄で実証実験が始まっている。これらの例は比較的簡単なケースで全て民生用であるが、IoTは特に軍事戦略を考える際に応用可能と思われるので、外為法との関連を検討してみたい。

IoTを単純化するためその機能で分解すると、①センシング(情報の収集)、②ネットワーク(情報の伝達)、③コンピュータなどのプラットフォーム(情報処理・解析)、④フィードバック(制御やサービスの提供)の4ステップから構成されていることが判る。以下、これら各ステップ別に検証する。

  • センシングの段階では、センサーが重要な役割を持ち、これは基本的には外為法では第10項に対応する。しかし、特殊な検知機能を持つ場合、例えば加速度計やジャイロスコープなら第11項に、放射線線量計ならば第2項に対応する。IoTに必要なセンサーの数は1兆個と言われており、非常に多彩な種類の情報を検知するためセンサーも多様なものが使用されることになり、その機能と用途などにより外為法との対応を検証することになる。IoTにおいてはセンサーがキイテクノロジーと言える。
  • ネットワークの段階では、センシングで得られたデジタルデータをプラットフォームに伝える役割があり、インターネットを中心とする有線・無線の通信システムが必要である。これは第9項の伝送通信装置及び通信に関連するソフトウエアに関連する。このソフトにはセキュリティ対策ソフトも含まれる。
  • プラットフォームの段階では、コンピュータ、クラウドなどが重要な役割を持ち、外為法の第8項やクラウドによる情報保存やその使用に伴う役務取引も判定の対象になる。
  • フィードバックの段階では、情報から得られた結果を外部に提供することになり、その技術内容に応じた技術(役務)について該否判定することが必要になる。

参考までに、IoTの場合と異なり、AIの場合はプラットフォームとフィードバックの段階で「機械学習」が入ることが特徴である。

以上、IoTを機能別に分解して、外為法との対応を検証してみた。IoTは第四次産業革命のためのテクノロジーの1つと云われているが、デジタル化の流れは増々進歩するので、その技術開発のフォローも必要になる。IoTが応用される分野は、企業の産業分野の業務改善が圧倒的に多く、次にエネルギー・インフラ分野、生活・環境分野が挙げられているが、将来は軍事用に転用される可能性も大きい。今後、IoTの利用が軌道に乗った後には、各企業は海外へ展開することが予想され、そのためにも今から輸出貿易管理の検討をしておくことは意義があると考えている。

(文責:八若洋平:2017.9.12.)