昨年のSTCエキスパート試験におけるEARに関する問題について

国の安全保障貿易管理は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいている。その理解度を判断する試験のうち最難関試験として、安全保障貿易情報センター(CISTEC)が主催しているSTC(Security Trade Control) エキスパート試験がある。問題は25問あって、最初の20問が5種択一(配点1)、残りの5問が選択式(配点2)である。選択式問題は5つの解答すべてが正解とならないといけない。そして合格するには7割の正解率が必要である。

さてこのCISTECのSTC エキスパート試験は日本の外為法だけでなく、米国のBIS(Bureau of Industry and Security)が管理しているEAR(Export Administration Regulations)からも3問出題される。通常EARの問題は択一式が1問、選択式が2問の計3問が出題される。

米国法EARは単に米国内だけでなく、域外適用される(中国が同様な法律を検討していることがCISTEC journal 2017.9に記載されている。)。すなわち日本企業が米国製品又はその部品(ソフトウェアを含む。)を利用した日本製品を日本から外国に輸出する場合に、米国法の遵守が求められる。ついては貿易関係の仕事に従事する者は外為法だけではなくEARも理解する必要があることから、STCエキスパートの試験範囲にEARの問題も含まれているのである。

本論に戻ると、STCエキスパート試験の中でEARに関する問題は難しいというのが受験者共通の認識である。しかも点数の配分の多い5問ある選択式問題のうち2問がEAR問題なので、エキスパート試験に合格するためにはEARの勉強をおろそかにはできない。

昨年の平成28年度STC エキスパート試験を振り返って見ると、択一式としての問題20はPart740の許可例外が出題されている。そして選択式として問題24と問題25が出題され、うち問題24はPart734のEARの定義に関することが問われている。

さて残りの問題25のことである。この問題の枝3と4はSpecially Designated Nationals List(SDNリスト)に関する出題であった。SDNリストはBISが管理しているEARではなく、OFAC(米国財務省外国資産管理局)が公表している懸念者リストである。2017年7月にCISTECから出版された「輸出管理ガイダンス 海外輸出管理法制度 米国版 第12版」にも、SDNリストに関するきちんとした説明は記載されていない。この問題が選択式問題ではなく、せめて択一式問題として出題されていればと思った受験者も多いのではないだろうか。勿論、米国製品を再輸出する際に、SDNリストをチェックすることは当然のことであるが。

横堀 勝一