AI兵器と自動運転車

以前、このブログでドローンや自動運転車について述べた。この中で、開発の延長で武器への転用を懸念した。最近の新聞記事の中で「AI兵器」が実質上開発されているとの報道があり、どのように規制するかが論議されている。(出典:日経新聞2018年8月28日、9月4日。以下出典の日付のみ記載)

ここではAI兵器とAIの利用が進んでいる最新の自動運転車について、外為法との関連を考察したい。
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、「人口知能」と訳されている。既に将棋や囲碁のAIソフトが有名になっており、 AIを活用する自動運転車の開発競争も過熱している。このようにAIを民生用に展開する開発は、自動運転車、空飛ぶクルマ、空飛ぶタクシーなどの開発がある。
(2018年7月16日、8月31日)

最近になりAIを利用した武器が開発されつつあり、AIを搭載した兵器は「自律型致死兵器システテム(LAWS)」と呼ばれ、火薬、核兵器に次ぐ第3の軍事革命と言われている。具体例として、米空軍の遠隔操作型無人機「プレデター」がLAWSの前段階と言われ、ロシアが開発したカメラや機関銃を備えた無人ロボット車両が話題となっている。国連欧州本部では先日AI兵器の国際会議が開催され、AI兵器の規制が論議されたが、米国、ロシアとは規制で対立しているのが現状である。

一方自動運転車については開発が進み「レベル3」の車が完成したが、法規制が追い付いていないため市場で販売が出来ない状況である。(朝日新聞:2018年9月6日)

以下、AI関連機器と外為法の規制対応を検討する。

    1. 先ずAI兵器について

      航空機については、輸出令の1項(武器)の(9)において、軍用航空機関連の規制がある。AI兵器の内容は明らかではないが軍用であることは明らかである。軍用航空機についての解釈は省令に記載されていないが、航空機タイプのAI兵器は武器に該当と言える。更にこの兵器が大量破壊兵器になるか否かは、兵器の運搬可能性と航続距離が300Km以上かで判断する。(「核兵器等」の規定に当てはまるか否かという意味。)

    2. 次に自動運転車についてはその装備が明らかになって来ており、外為法対応は次のようになる。
      • 軍用の車両については、輸出令の1項(武器)の(7)において規制があり、軍用ロボットも含み武器に該当となる。
      • 民生用の自動運転車(「レベル3」クラスの車)については、貨物と技術の両面から検証することが要求される。貨物として検証すべき部品としては、コンピュータ(8項)、伝送通信装置(9項)、集積回路・二次セル(7項)、カメラ・センサー類(10項)があり、技術・ソフトウエアとしては通信と暗号関連(9項)が挙げられる。車の種類によりその仕様で絞り込むことになる。これらの規制に該当しなくても、軍事用に転用される可能性があるので、キャッチオール規制について、用途と需要者のチェックが必要となる。
    3. ドローンのような簡便な飛行体の場合、AIを活用しているので軍事用に転用される可能性が大きく、先ず1のケースで該非を判定し、該当しない場合はAIの部品類について2のケースに準じて検証することが望まれる。今後、外為法はAI兵器に対応できるような法改正も考えられるが、今から輸出貿易管理の検討をしておくことは意義があると思う。

文責:八若洋平