安全保障貿易管理 技術用語解説集 No.4「噴霧乾燥器(スプレードライヤー)」

用  語 項  番
噴霧乾燥器(スプレードライヤー) 3の2-2、3の2-2省(2)5の2

 

噴霧乾燥器(Spray dryer)は、1(※1)に示しているように、溶液もしくは微粒子懸濁液(スラリー)を熱気流中に噴霧(アトマイズ)し微小粒状製品を得る乾燥器で、乾燥と造粒を同時に瞬間的に行ない、ほかの方法に比べて非常に小さい粒径が得られるという特長を有する。初期含水率が高いため製品単位質量当りの熱コストは大きいが、きわめて短時間で乾燥が終結し熱変性物質でも容易に乾燥できる(※2)

噴霧の方法

2(※3)に示しているように、回転円板(ディスク)を用いて遠心力によるか、あるいは高圧でノズルから吹出すかの2つのアトマイズ法に大別できる。熱気としては加熱した空気、また酸化を避ける場合は比較的不活性の窒素あるいは炭酸ガスを使用する。また、乾燥の過程は、3(※4)に示すように進行し、最終的には、球形の流動性のよい粒子(顆粒)が得られる。

溶液の濃度、噴霧速度、乾燥温度などにより粒子径を調節することができ、また、乾燥が速いため、比較的熱に弱い薬物でも処理可能である。

応用分野

連続的に大量生産でき、コストも安いことから、粉乳、インスタントコーヒー、粉末調味料など、食品関係などでも古くから広く用いられている(※5)
食品、洗剤、医薬品など以外の分野での工業的利用としては、1980年頃からのいわゆる「ファインセラミクス」ブーム以降、きわめて活発となり、粒径微細化と顆粒化による流動性付与は、その後の成形および焼結過程に多大なメリットをもたらすことから、その製造プロセスにおける「粉体調製」には欠かせない装置となった。また、元々、粉末を扱う「粉末冶金」分野にも適用されるようになり、超硬合金や各種サーメット材料の製造技術においても革新をもたらした。さらに、その後の、「ナノテク・ナノマテリアル」ブームにおいても、重用されているばかりでなく、最近の金属あるいはセラミックスを用いる積層造形・3Dプリンティング用の原料粉末の製造においても大いに活用されるであろう。

参考資料

(※1)大川原化工機株式会社:スプレードライヤー Fシリーズ(セラミックス・新素材用) カタログ
(※2)(社)日本粉体工業技術協会編:紛体工学概論、粉体工学情報センター、pp177-78(1995)
(※3)大川原化工機株式会社:研究開発用スプレードライヤ L8i カタログ
(※4) 松嶋景一郎他:北海道立工業試験場報告 No.299 、pp59-66(2000)
(※5)茎田嘉男:色材、46(6)、pp383-390(1973)

(図1) (図2)(図3)

メーカー・取扱い企業等