STCエキスパート試験におけるEAR問題:前年度出題内容と2020年度出題予測

米国法EAR(Export Administration Regulations)は米国国内だけでなく域外適用されることから、貿易管理を行う上で必須の法律である。

安全保障貿易情報センター(CISTEC)が主催しているSTC(Security Trade Control) Expert試験でも、EARに関する問題が25問のうちの3題出題され、うち択一式が1~2問、選択式が2~1問である。

STC Expert試験はAssociate試験、Advanced試験と比較して、はるかに難しいというのが受験者共通の認識である。しかも点数の配分の多い5問ある選択式問題のうち少なくとも1問はEAR問題である。エキスパート試験に合格するためには、3問中2問は正解を得る必要がある。

まず平成30年度のEAR問題の内容について記載する。

1.平成30年度のEAR Expert出題内容について

昨年の平成30年度STC Expert試験を振り返って見ると、択一式としての問題が2問(問題19、20)、選択式として1問(問題25)が出題された。内容はPart 734と736(問題19)、Part 740 (問題25)、Part744(問題20)から出題されており、内容的に順当であった。

①Part 734と736問題(問題19):EARの定義に関する問題は平成29年度にも出題された(問題25)。
今回はデミニミス・ルール(de minimis rule)と直接製品(direct product)についての問題であり、それにEAR 99製品を絡めていることが特徴である(枝B,D)。昨年のブログに記載したように、「テロ支援国とEAR99の関係に関する問題は再三出題されているので、良く整理しておく必要がある。」

②Part 740問題(問題25):許可例外の問題である。4大許可例外(GBS、LVS、TSR、CIV)
のうち、LVS、TSR、CIVについて問われ、それ以外の許可例外としてTMPとSTAが出題された。
問題25/枝4のSTAは比較的に新しい許可例外であり、A:6国群に使用する際には国家安全保障(NS)理由のみの規制品目に有効である。選択問題として許可例外を出題することは納得できるが、A:5国群との違いを記憶することまで要求することには疑問が残る。

③Part 744問題(問題20):昨年のブログに「平成29年度はPart 746から出題されたので、平成30年度はPart744から出題されるのではないか。」と推定したがその通りの出題であった。

2.2020年度Expert試験のEAR出題予測

ここでは、2020年8月28日(金)に実施されるSTC Expert試験の出題のうち、EARに関する出題を大胆に予測する。

①Part734,736,738問題:EARの定義に関する問題である。昨年はデミニミス・ルールと直接
製品について出題されたが、ファーウェイ問題と関連して改めてデミニミス・ルールと直接製品について出題される可能性があると考える。

②Part 740問題:許可例外の問題は毎年出題されるので、今年も必ず許可例外から出題される。特に今年は4大許可例外のうちCIVが削除されたので、他のGBS、LVS、TSRについては条を厳密に理解しておく必要がある。

③Part744、746問題:昨年はPart 744から出題されたので、今年はPart746から出題されると思われがちであるが、果たしてそうなるだろうか。今年はファーウェイ問題との関連から、Part 744のEntity ListやUnverified List(UVL)について改めて問われる可能性があることを考慮して頂きたい。

以上

横堀 勝一