EAR:線幅5nm半導体の製造技術 -SMIC,ファーウェイ;TSMC,サムソン電子-

U.S. Department of Commerceは、昨年末の12月18日に「Commerce Adds China’s SMIC to the Entity List」を発表した。中国のSMICをエンティティ・リストに追加して、半導体規制を強化したのである。

その結果日本製品を中国に輸出することについて、CP&RMセンターへの問い合わせが増加している。ここではSMICと半導体の製造技術について整理する。

    1. SMIC(中芯国際集成電路製造)SMICはSemiconductor Manufacturing International Corporationの略であり、Semiconductor Manufacturing South China Corporationも含まれている。
      SMICは中国最大の半導体チップのファンドリー(受託生産会社)であって、スマホや通信用途の製造会社であるファーウェイとは業種が異なる。SMICはファーウェイに半導体を納入しているが、SMICの半導体製造技術そのものはTSMC(台湾;世界最大のファンドリー)やサムソン電子(世界第2位のファンドリー)よりも遅れているので、最先端のスマホやサーバー向けの半導体製造に問題がある。但し、現在不足が伝えられている一般的な自動車用半導体製造は可能である。
    2. 半導体の製造プロセス半導体ウエハーの製造プロセスは次の通りである。
      ①シリコンウエハーへレジストの塗布

      ②フォトマスクの上部から露光してウエハーに回路を転写

      フッ化水素によりエッチィングして回路が刻まれたウエハーを製造
      半導体は回路の線幅が細いほど性能が高まることから、現在最先端の線幅は5nmである。
      5nmの線幅を得るには、②の露光の際にEUV(極端紫外線)露光装置を用いなければな
      らない。
    3. EUV露光装置上記2②の線幅5nmを製造可能なEUV露光装置は、オランダのASML1社のみが製品化している。ASMLの露光装置は韓国サムソン電子と台湾積滞体電路製造(TSMC)が使用している。
      SMICは当該EUV露光装置をASMLから輸入することを望んだが、延期された。
      今回米国政府はエンティティ・リストにSMICを追加することにより、EARの規制を強化した。
      規制対象は、SMIC向けの10nm以下半導体製造品目(含む、EUV技術)としている。
    4. 本分野における日本の政官学へ
      かつて日本は半導体で世界を制覇していた時代に、露光装置も日本製品が主流であった。
      現在でも汎用品の半導体製造には、キャノンやニコン製品が使用されている。しかしASMLに企画力、デザイン力で敗れた。現在TSMCは線幅3nmの半導体の製造も可能と伝えられているが、使用している最先端の技術を擦り合わせればそれも可能であろう。

しかしながら線幅1~10Åを目標とすると、ブレークスル―が必要になる。
半導体用化学品である上記2①のレジスト、及び2③の12ナインの高純度フッ化水素は、日本が強い分野である。露光装置、検査装置及び材料を組み合わせた日本の現役の開発力に期待している(積層化は別途)。

横堀勝一