新型コロナと外為法的考察

新型コロナウイルスの対策は世界的に緊急な課題である。この新型コロナに関して、ウイルス、ワクチン等について、外為法との関連について考察してみたい。

外為法の輸出許可が必要な品目としては、輸出令3の2項(生物兵器)の(1)があり、詳細は省令第2条の2の一号でウイルスが規制されている。
このウイルスには具体的なウイルス名が列挙されており、例えばエボラウイルス、SARSコロナウイルス、豚熱ウイルス等最近ニュースになったもの含め約60種記載されている。これらのウイルスを生物兵器として輸出することは特別なケースで、現実問題としては空港等の防疫体制で、所謂水際対策でチェックされている。
現在の新型コロナウイルスについては、この省令で規制されているウイルスには未だ登録されていない。西欧ではこのコロナ対策をウイルスとの戦争と位置付けていることでもあり、近い将来に追加登録されるのは間違いない。
従って、現在規制されているSARSコロナウイルス等の場合と同じような対応することが必要であろう。
新型コロナウイルス用のワクチンについては、同じ省令で「ウイルス(ワクチンを除く。)」と記載されており、これはウイルス用(同一号)も細菌用(同二号)も同じ取り扱いであり、ワクチン自体は生物兵器とは一線を画している。
これは防疫目的のために使用されるので当然である。
最近、EUがコロナワクチンの輸出管理を強化すると発表(朝日新聞:2021年3月21日)している。
これはワクチンを自国・自地域優先で使用したいとの考えであり、本来の輸出管理とは異なる。
又、中国は自国産のワクチンで世界各国に輸出攻勢をかけている(日経新聞:2021年4月4日)が、これはワクチンを戦略物資として自国優位に管理しようとする国の方針であり、これも本来の輸出管理とは異なる。
それでは、ワクチンは外為法と無関係だとするには、今一つ検討が必要と考える。F社を含めワクチンの製造を「メッセンジャーRNA:mRNA」に依存していると云う。
日本製のワクチンは未だ治験の段階(日経:2021年3月12日)だが、同様な製造法とされる。
このmRNAとは核酸である。
従って輸出令3の2項(2)の9で、核酸の合成・結合等を行う装置(貨物)、及び省令第15条の3で、その装置の設計、製造、使用に係る技術について、該当するか否かの検討が必要になる。
今後、ワクチン証明書(ワクチンパスポート)の活用が注目されている。
これについては、デジタル化とセキュリティ対策が重要と思われるが、詳細な内容はこれから確定する。
新型コロナウイルスとワクチンに関係する外為法の対応について考察したが、ワクチンの場合と同じように、日本の企業の取組みは世界の開発に遅れているのが目立つ。
ものづくり世界一を誇っていた日本は過去のことになっているのが心配である。
尚、半導体関連の2か所の工場で火災があり、これでは戦略物資を扱う会社の資格がないのではと考える。

文責:八若洋平