STCエキスパート試験におけるEAR問題:前年度出題内容と2021年度出題予測

米国法EAR(Export Administration Regulations)は米国国内だけでなく域外適用されることから、安全保障貿易管理を行う上で必須の法律である。
安全保障貿易情報センター(CISTEC)が主催しているSTC(Security Trade Control) Expert試験でも、EARに関する問題が5問のうちの3題出題され、うち択一式が1~2問、選択式が2~1問である。
STC Expert試験では、点数の配分の多い5問ある選択式問題のうち少なくとも1問はEAR問題であり、エキスパート試験に合格するためには3問中2問は正解を得る必要がある。
まず平成30年度の各EAR問題の内容について確認する。

1.2020年度のEAR Expert出題内容について

2020年度のSTC Expert試験を振り返って見ると、択一式としての問題が2問(問題19、20)、選択式として1問(問題23)が出題された。
内容は許可例外、規制品目リスト及びカントリーチャート(問題19)、軍事エンド・軍事エンドユーザー規制(問題20)、EAR基本問題(問題23)から出題されており、内容的に順当であった。

  1. 問題19:許可例外License exceptions (Part 740)、規制品目リストCommerce Control
    List(Supplement No.1 to Part 774) 及びカントリーチャートCommerce Country Chart(Supplement No.1 to Part 738) に関する問題である。
    4大許可例外(GBS、LVS、TSR、CIV)のうち、LVS、GBS 、CIVについて問われたが、EARから削除されたCIVを改めて出題した。
    規制品目リスト及びカントリーチャートについては平成24,27年度にも出題されており、いずれも許可例外と抱合せの問題である。CP&RMセンター発行のテキストにもそのコピーを記載している。
  2. 問題20:軍事エンド・軍事エンドユーザー規制(Part 744)の問題である。
    昨年の出題予測に「Part744、746問題:昨年はPart 744から出題されたので、今年はPart746から出題されると思われがちであるが、果たしてそうなるだろうか。今年はファーウェイ問題との関連から、Part 744のEntity ListやUnverified List(UVL)について改めて問われる可能性があることを考慮して頂きたい。」と記載した。
    結果としてPart 744からの出題であった。
  3. 問題23:公知の技術、みなし再輸出、直接製品、組込比率といったEARの基本的な知識に関する問題である。ファーウェイとの関連から問題の枝2はEntity List関係であり、枝3~5は直接製品に関係する問題である。CISTECとしても最新のことを問うたのではないか。

2.2021年度Expert試験のEAR出題予測

ここでは、2021年8月30日(月)に実施されるSTC Expert試験の出題のうち、EARに関する出題を大胆に予測する。

  1. Part734,736,738問題:2020年度の問題23のようなEARの定義に関する問題である。
    公知の技術、みなし再輸出、直接製品、組込比率ついて、改めて出題される可能性が高い。
  2. Part 740問題:許可例外の問題は毎年出題されるので、今年も必ず出題される。4大許可例外のGBS、LVS、TSR と削除されたCIVについて条件を厳密に理解しておく必要がある。
  3. Part744、746問題:平成30年度、2020年度と2年続けてPart 744から出題されたので、今年はPart 746から出題されると思われる。

CP&RMセンターは安全保障貿易管理の専門家の養成とSTC Expert試験の合格を目的として、セミナーを開催してきた。本年度は当該セミナーの開催を延期したことから、CP&RMセンター発行のテキスト「安全保障貿易管理に関する法令及び実務の基本知識」に目を通すことをお勧めする。EAR問題3問のうち2問を正解するために必須であると考えている。