デュアルユース貨物、技術の輸出管理

デュアルユース貨物、技術は輸出令別表第1、外為令別表の5~13及び15項で規制される。告示貨物は輸出令別表第3の3の規定により定める貨物、付表技術は提出書類通達の別表2の付表に纏められた技術と定義される。告示貨物と付表技術は5~13項に存在する。いわゆる機微度の高いものとしてより慎重に輸出審査するよう外為法で定められている。貨物に関しては少額特例が適用可となる総価額が5万円以下(他貨物は100万円以下)となっている。又貨物、技術共に“と地域②”が仕向け地、提供先の場合、許可申請先が本省(安全保障貿易審査課)となる。(例外はあるが他の5~13項貨物、技術は経済産業局)。加えて取引内容、対比表、需要者についての詳細資料、需要者誓約書等が申請時に追加で要求される。15項は機微品目及びその技術が規制対象であり更に厳しく管理される。例えば該当技術の提供先が“い地域①及びり地域”であっても申請先は本省となる。

デュアルユース貨物、技術は上述のように3段階に分類され管理される。この分類がどのような考えに基づいているのか興味があり、ワッセナーアレンジメント(WA)HPを調べた。“通常兵器とデュアルユース貨物・技術の移動(輸出)の透明性強化と、より責任ある管理の実施により地域、国際社会の安全と安定に寄与すること”がWAの目的である。デュアルユース貨物、技術はBasic List、 Sensitive List(告示貨物と付表技術)、 Very Sensitive List(機微品目及びその技術)で管理される。

先ず、これら貨物・技術を選ぶ基準について纏めた。

  1. Basic List(デュアルユース貨物、技術)
    軍事力の固有な開発、生産、使用又は強化を行う上で主要で重要な要素となる貨物・技術が管理対象である。これらアイテムを選ぶために以下の項目についても評価が必要とされている。

    • 参加国以外の外国から調達の可能性
    • その貨物輸出を効果的に規制できるか否か
    • 対象とするアイテムに関し明確で客観的な仕様が作成できるか否か
    • 他のレジームで規制されているか否か
  2. Sensitive List(告示貨物、付表技術)
    Basic Listにあるアイテムであって、其の拡散がWAの目的を著しく害する先進的な通常軍事力の固有な開発、製造、使用又は強化に直接的に関係する主要な要素となるもの。

    1.一般的な商業上利用される材料又は部分品は含まれないものとする
    2.適切には、規制する関連特性の閾値はケースバイケースで定められねばならない。
  3. Very Sensitive List(機微品目及びその技術)
    Sensitive Listからの品目であって、其の拡散がWAの目的を著しく害する先進的な通常軍事力の固有な開発、製造、使用又は強化に欠くことのできない主要な要素となるもの。注:適切には、規制する関連特性の閾値はケースバイケースで定められねばならない

参加国によって得られた技術開発成果と経験を反映するために定期的に上述のリストは見直しされる。個々の軍事力にとって重要となるBasic Listも見直しに含まれる。関連するアイテムの修正に於いて、適切なレベルで透明性を確立することを第一とできるよう調査は実施される。リスト見直しの決定は定期的な会合で決定される。
該リストアイテムの移転に関する透明性を高める為に参加国間で以下に示す要領での情報交換が義務付けられている。

    Basic Listアイテム

  • WA非参加国に対する拒否案件について通知(年2回)

    Sensitive List 、Very Sensitive Listアイテム

  • WA非参加国に対する拒否案件についてできれば30日遅くとも60日以内に通知
  • WA非参加国に対する許可/移転について通知 (年2回)
  • 過去3年間に他のWA参加国が拒否した案件と本質同じ案件を輸出許可した場合にできれば30日遅くとも60日以内に通知

以上貨物、技術を各リストアイテムに選択するためのWAの基準、決定プロセスについて述べた。WAの決定事項が咀嚼され我が国では外為法に反映される。

①最新の高度軍事技術についての十分な知識、②非参加国の現状の軍事技術を正確に評価できること、③そして①、②が参加国で共有化されていることが一連のプロセスに必要である。
又余分な範囲を含まず、効果を発揮できる規制範囲の決定の際にも①、②、③が必須となる。企業活動が自由に発展するために、規制範囲は限定された方が良い。

企業にとって研究開発は将来の財を生むための手段で止むことはない。デュアルユース貨物、技術の開発が更に拡大し、告示貨物、付表技術、機微品目及びその技術の規制対象は今後益々増えてゆくと予想できる。

企業は新製品・技術開発に際しては、計画立案の段階で関連するWA及び外為法の規制を前もって理解し、開発戦略、戦術を策定することが必要であると考える。

以上

中村英夫