外為法における法令用語の使い分けについて

先日、法令用語の解釈について、林修三先生の「法令用語の常識」という本が紹介されていましたので、購入してみました。その中で、『又は』と『若しくは』の使い方について、説明がありましたので、以下に紹介します

『又は』と『若しくは』は共に、選択的接続詞と呼ばれ、法令用語の上では、厳格に使い分けられているそうです。選択的接続の段階が2段階になる場合、例えば、A又はBというグループがあって、これとCというものを対比しなければならない場合は、

(A若しくはB)又はC

というように、小さい接続の方に『若しくは』を使い、大きい接続の方に『又は』を使うのだそうです。小さいグループが3つ以上で構成される場合は次の様に”、”で並べ、最後に”若しくは”が付きます。

(A、B若しくはC)又はD

選択的接続の段階が3段階以上の場合もありますが、この場合では、小さい接続には『若しくは』を用い、一番大きな接続にのみ『又は』を使うとの事です。

{(A若しくはB)若しくは(C若しくはD)}又はE

外為法25条を例にとると、以下のようになります。


国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用  ⇒ 設計・製造・使用が並列で接続

に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者 ⇒ 居住者・非居住者が並列で接続

又は ⇒ 特定国において提供する取引と特定国の非居住者に提供する取引が並列で接続

特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。


小さい接続には、全て『若しくは』を使うことになるので、多段階の接続があると非常に、表現が複雑です。このような場合は、上記のように色分けして、どれとどれが並列になっているか確認すると判りやすいと思われます。

次に『及び』と『並びに』の使い分けについて、外為法第53条第4号を例に説明します。

『及び』と『並びに』は共に、併合的接続詞と呼ばれ、普通に使われるのは『及び』です。併合的接続の段階が2段階になる場合、例えば、A+Bというグループがあって、これにCを加える場合は、

(A及びB)並びにC

というように、小さい接続の方に『及び』を使い、大きい接続の方に『並びに』を使うのだそうです。小さいグループが3つ以上で構成される場合は、”若しくは/又は”と同様に”、”で並べ、最後に”及び/並びに”が付きます。

(A、B及びC)並びにD

併合的接続の段階が3段階以上の場合もありますが、この場合では、最も小さい接続にのみ『及び』を用い、大きな接続には全て『並びに』を使うのが現在の慣例の様です。

{(A及びB)並びに(C及びD)}並びにE

外為法53条第4項を例にとりますと、以下の様になります。


第一項又は第二項の規定による禁止をする場合において、経済産業大臣は、違反者に係る次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める者が当該禁止の理由となつた事実及び当該事実に関してその者が有していた責任の程度を考慮して当該禁止の実効性を確保するためにその者による当該禁止に係る業務を制限することが相当と認められる者として経済産業省令で定める者に該当するときは、その者に対して、当該禁止に係る期間と同一の期間を定めて、当該禁止に係る範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止することができる。

一 当該違反者が法人である場合その役員

及び ⇒ 現在役員である+過去役員であった(60日以内)

当該禁止に係る処分の日前六十日以内においてその役員であつた者

並びに ⇒ 役員+使用人

その営業所の業務を統括する者その他の政令で定める使用人(以下この号及び次号において単に「使用人」という。)

及び ⇒ 現在使用人である+過去使用人員であった(60日以内)

当該禁止の日前六十日以内においてその使用人であつた者

二 当該違反者が個人である場合その使用人及び当該禁止に係る処分の日前六十日以内においてその使用人であつた者


接続が多段階になる場合、『及び』と『並びに』が混在しますので、非常に表現が複雑です。このような場合は、『又は』と『若しくは』の時と同様に色分けして、どれとどれが接続されているか確認すると判りやすいと思われます。

参考文献 林修三、法令用語の常識

山田 徹