PFAS規制について思う(その2)

11月28日に、ペルフルオロヘキサンスルホン酸若しくはその異性体又はこれらの塩(以下、「PFHxS類」と略)が、第一種特定化学物質に指定される事が閣議決定されました。

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、「化審法」と略)第2条第2項に規定された第一種特定化学物質は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令(以下、「令」と略)で規定されますので、政令として閣議決定により公布・施行されます。

第一種特定化学物質とは、難分解性、高蓄積性及び人又は高次捕食動物への長期毒性を有する化学物質です。当該物質については、製造及び輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入禁止等が規定されています。

ただし、先に第一種特定化学物質に指定されたPFOA(ペルフルオロオクタン酸)類、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)類を含めて、明確な毒性は現在のところ確認されていません。
ただ、「毒性があるかも知れない」+「分解されにくい(分解しない訳では無い)=環境にとどまりやすい」と言う事で規制されています。不思議なことです。

更に不思議な事に、PFOA類やPFOS類、PFHxS類に、「毒性があるかも知れない」と言う事から、有機フッ素化合物全てを規制しようとする動きがある事です。
EUや米国の各州でその様な動きがあり、実際に規制が始まっているところもあります。

例えば、蛇の毒は複数のタンパク質から構成されていると言われていますが、だからと言ってタンパク質を規制しようという動きにはなりません。
ですが、有機フッ素化合物では、それが起こっているのです。

多分、同じアルファベット4文字の略号で記されるので、PFOA、PFOSとPFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物、有機フッ素化合物の総称)と区別がついていないのだと思います。

ネットで、PFASを検索すると、「代表的なものとして、PFOS、PFOAがある」と記されたものがありましたが、決して代表的なものではないです。

PFASと呼ばれる有機フッ素化合物は、耐熱や耐薬品、撥水・撥油性に優れ、我々の生活を支えてくれています。近頃話題の半導体の製造にも不可欠ですし、リチウムイオン電池のセパレータにもPFASが使われています。PFASが無ければ、我々は、半世紀前の生活に戻る事になります。むろん、スマホもパソコンも、携帯電話さえありません。

「分解されにくい」はこの物質の特徴であり、他の物質では代替が出来ません。
「分解されにくい」事からPFASは「永遠の物質(eternal material)」とも呼ばれています。

永遠の物質で思い浮かぶのは「金」ですが、最近だと塩害に強い「ステンレススチール」も開発・実用化されていると知人から聞きました。だからといって、これらの材質が規制されるとは思えません。

更に、「毒性があるかも知れない」という理由で規制するのであれば、明確に「発がん性がある」とされている喫煙が、世界中で放置されている現状に、強い違和感を覚えます。

もう一度述べますが、PFASは我々の現在の生活レベルを支えてくれています。安全保障上の弱体化にもつながります。PFASをひとくくりに規制しようとしている人は、半世紀前の生活レベルに戻る事を覚悟して進めて頂きたいと思います。

2023.12.11
文責 山田 徹