STC Expertエキスパート試験におけるEAR問題:2022年度出題内容と2024年出題予測

 安全保障貿易情報センター(CISTEC)が主催しているSTC(Security Trade Control) Expert試験が2024年4月22日(月)に開催される。当該試験では25問のうちEARに関する問題が3題出題され、そのうち択一式が2問、選択式が1問出題される。選択式問題は点数配分が多い。
Expert試験に合格するためには、EAR問題3問中2問は正解を得る必要がある。
ここでは前回の2022年度EAR Expert出題内容を解析し、今回の出題傾向を予測する。

1.2022年度のEAR Expert出題内容について 

まず2022年度のEAR問題3問の内容について解析する。
2022年度のSTC Expert試験を振り返って見ると、択一式としての問題が2問(問題19、20)、選択式として1問(問題23)が出題された。

  1. まず問題19はロシア又はベラルーシへの輸出・再輸出に関する問題である。これは2022年2月にロシアがウクライナへ侵攻した為に、新たにEARに追加された法令Part 746.8(a)を中心にした内容である。特にECCN番号の付与された品目だけでなく、EAR99との関連も問われていることに注意する必要がある。
  2. 次に問題20は、先端半導体に関して対中国輸出規制を強化したPart 744.23を中心にした内容である。ここでもEAR99との関連が問われている。
  3. 問題23はPart 734にて定義されているEARにおける米国原産品目(特に技術)、再輸出の理解を問うたものである。そのうち問題の枝5は半導体設計ソフトウェアがオブジェクトコードかソースコードかを判別する必要があるので、EARに関する法令問題としては不適である。特にこれは選択式問題なので、合格を目指して学習してきた者にとっては酷な問いであった。
2.2024年Expert試験のEAR出題予測

ここでは、2024年4月22日(月)に実施されるSTC Expert試験の出題のうち、EAR
に関する出題傾向を予測する。

  1. Part 734関連: EARの定義に関する問題は、2016年以降常に出題されている。公知の技術、みなし再輸出、de minimis rule、直接製品について、理解しておく必要がある。
  2. Part744、746関連: Part 744のエンドユース・エンドユーザー規制、及びPart 746禁輸国(特にロシア・ベラルーシ)規制については、現在の時事問題とも深く関連しているので出題の可能性が高い。
  3. Part 740関連:許可例外の問題は2018年までは3つの出題のうちの1問として単独で出題されていたが、最近は問題のうちの1つの枝として出題されるようになった。少なくとも3大許可例外GBS、LVS、TSRは整理しておく必要がある。

CP&RMセンターは安全保障貿易管理の専門家の養成を目的としてセミナーを開催しており、そこで使用するテキスト「安全保障貿易管理に関する法令及び実務の基本知識」を発行している。CISTECのSTC Expert試験のEAR問題3問のうち2問に正解するために、当該テキストに今一度目を通すことをお勧めする。

以上

横堀 勝一