産・学・官で安全保障貿易管理を推進

中村英夫です。

私の故郷は原爆被爆地である広島市です。長兄は勤労奉仕に登校後被爆し同年9月に14歳で亡くなりました。
私の小学校時代は原爆投下時間(8月6日8時15分)には毎年サイレンが鳴り黙祷をするのが常でありました。母の淋しそうな様子は私を悲しく憂鬱な気分にしていました。その母も本年11月に亡くなりました。仏壇廻りの整理中に長兄の13回忌に亡父が記した弔辞が出てきました。兄の思い出を綴ったその弔辞からは父の兄に対する深い愛情を感じ、さぞかし無念であったろうと涙が出るのを禁じ得ませんでした。世界のどこの国においても我が子に対する愛情は深く、親より先に子供が死ぬことを願うものはいないでしょう。日ごろ希薄になりがちな平和の大切さを深く認識した出来事でした。

 世界の情勢を鑑みますと平和への動きは一向に進みません。紛争で我が子、家族の死を嘆く中東域の人々のTV映像がしばしば流れます。オバマ大統領は2009年4月プラハで核廃絶の方針を演説し高く評価されました。ノーベル平和賞受賞に繋がったわけですが、その後の核政策は国益と利が優先し高邁な理想からはほど遠いものであります。又この十年間でアジアを主に核保有国の数は増し、中東域に加え朝鮮半島も緊張してきました。

 優位な軍事力で他国の侵略を抑止し、加えて外交優位を保持することが国益と考え、各国は軍事力を今後さらに強化するものと予想できます。各国の指導者は全員が聖人であるはずもなく国益を優先するでしょう。国際平和にとって好ましくない状況が進んでいます。
 資源のない我が国が国際社会で生き抜くには常に技術優位に立ち続ける必要がありますが、この技術を他国の兵器開発に使わせない責任があります。
我が国の隣国には国連武器禁輸国、非ホワイト国があります。武器開発に日本の先端技術は狙われていると言っても過言ではないでしょう。産・官・学の指導者・研究者・技術者が平和維持への高い意識を持ってこれに対抗することが理想ですが現状とは大きなギャップがあります。
 私は2010年2月に安全保障貿易管理に巡り会い、このギャップを埋める第一段の具体的方策はこの安全保障貿易管理の充実であると考えています。官の産に対する指導に加え、今後は学に対する一層の指導が必要と考えます。

 学の安全保障貿易管理支援を目的とするCP&RMセンターの活動は時節を得たものであり、この活動を通し日本の先端技術が武器に使われることを阻止し、平和と安全の維持に貢献したいと考えています。