EV(電気自動車)と外為法の対応

自動車産業は日本にとって重要な産業である。最近は環境規制に関連して、EV、HV、PHV、FCV等と云う略号をよく見かける。EVとは 電気を動力源とする自動車の略であり、米国のテスラが既にこの生産販売に参入し、さらにアップル等が進出を予定していると報じられている。(日経新聞:2021年2月5日)

従来の自動車は、ガソリン等の燃料によりエンジンを動かして稼働しいる。エンジン起動時に鉛蓄電池の力が必要であり、走行時に充電している。これに対して、EVはリチウムイオン電池(二次電池:蓄電池)で全ての動力と電気を賄うことが可能であるが、定常的な充電が必要になる。しかし、エンジン及び関連の部品を使用しなくて済むため、新規参入する際の技術的な壁が低くなる。

外為法では第7項に一次電池・二次電池の規制がある。市販されているリチウム電池(LIB)は電気密度が規制値未満のため規制外となるが、EVに搭載されるリチウム電池(LIB)は電気容量が大きくなるので、厳密な判定が必要となる。

車は民生目的のために広く使用されているので、これまで乗用車、その部品はいろいろな適用除外があるが、今後のEV用LIBの扱いがどのようになるか注目される。

また注目すべきは、EVはITと組み合わせて自動運転車になると、武器又は武器輸送としての使用が充分可能である。ドローンの場合では既に武器に使用した例が報告されている。ITの発展による自動運転車では、各種ITセンサー、コントローラー及びソフトウエアが重要な役割を担っており、武器転用の防止策、さらにセンサーやソフトウエアの外為法との対応が重要である。

上で述べたテスラやアップルの戦略はEVに留まらず、所謂IT・EVのソフト主導で自動車産業を支配することが最終目標と想定される。米国以外でも、中国が同様な開発を行っている。モノ作りの点からは、スマホの製造と同じような委託製造方式が想定され、従来の車メーカーが生き残るためには、その下請けになるか否かの判断が必要になる時代が来ている。またその前哨戦として、LIBや半導体を戦略物資として扱っている面がある。

日本の産業の安全保障という面から考えると、技術開発では先行するが、製造後に撤退している過去の例(LIB、太陽電池、プラットパネル)と同じにならないようにすることが肝要である。例えば、LIBについては日本人がノーベル賞を取っているのに、現在の製造は中国、韓国が主流である。このようになった原因は何なのか?日本に何が不足していたのか? これらは当事者を含め詳細に考察しないと結論は出ないが、小生が考える一つは動物の生きる本能「アニマルスピリット」に相当する力が不足していたと考える。米国、中国、韓国と対抗して、スピリットの点で勝ることが必要条件と考える。今後の自動車産業の更なる発展を期待したい。

文責:八若洋平